永田收写真展『誰もいない展覧会 ~猫の眼~』(店舗は臨時休業中です)
永田收写真展『誰もいない展覧会 ~猫の眼~』
2020 4/18(土)~花森書林営業再開まで
会場:花森書林(店舗は臨時休業中です)
当店が臨時休業に入る少し前、写真家の永田收(ながた・おさむ)さんと互いの近況について話を交わしました。
永田さんは受け持っておられる写真教室や控えていた写真展などがすべて延期、中止となり、当店もまた当面の間店を閉めることを決断したばかりでした。先の見通しが分からない中で、互いに何かできることはあるだろうか、何ができるだろうと思案していましたが、同じ思いの永田さんの発案もあり、休業中の店内で永田さんの写真展を開催することに致しました。勿論、店舗は休業中なので、直接足を運ぶ人は誰もいない写真展です。
永田さんはそれを<エアーギャラリー>と笑って仰いました。
この写真展のテーマは「猫」です。永田さんが下町を散歩をしながら路地裏で出会った猫たちです。永田さんの人柄そのものである実直な写真に、自分も含め根強いファンが多いわけですが、この写真展が家から気軽にでることのできない沈んだ気持ちや、溢れかえる情報で疲れた心を少しでも軽くしてくれることを願って、ひっそりと開催いたします。
大変な事態である。心身、経済ともに毎日不安がつきまとう。
阪神淡路大震災後から路地裏の猫を意識的に撮るようになった。
野良猫たちは過酷な状況でも
強く、しなやかに、したたかに生き延びている。
彼らの放つ眼光のするどさとやわらかさに
度々力をもらってきた。
誰もいない臨時休業中の店内から発信する。
永田收
展示の最後に
永田收さんのおはなしと今後の活動のこと
「町とともに猫を楽しんできました。
時に猫を被写体としながらも
これから残っているか分からない風景、下町を同時に記録し続けています。
自宅待機、外出自粛をせざるを得ない状況の中で
今回の<エアーギャラリー>とでもいうのか、
臨時休業中の古書店内で「誰もいない展覧会」を開催することにしましたが、
直接、写真を観ていただくことができない、
インターネットを通じてご高覧いただくということは
細やかな表現を伝えるという部分では本来難しいことだと思っています。
ただ、観てくださる方がより想像力を働かせ、
また直接観る以上に作品そのものや、その表現方法についてより知りたいという興味を持っていただけるならば、決してマイナス面ばかりでもないと信じています。
今回の展示はある意味「幻」の写真展でもあります。
現代美術のテーマとしてしばしば「空間」と「時間」というものが挙げられますが、
誰もいない空間で展示を行うことで、いつもと違う空気が流れ、
さらにそれをネットで公開することによって、
新しいコミュニケーションが生まれることに期待しています。
2020年4月18日 永田收
永田さんは1953年生まれ。
写真を勉強された後、1976年から足かけ8年世界を放浪されました。
きっかけは当時、愛読者の多かったという小田実『何でも見てやろう』や、冒険家、上温湯隆の著作なども後押しになったといいます。
タイ、マレーシア、インド、パキスタン、アフガニスタン、トルコ、エジプト、スーダン、ケニア、ルワンダ、ザイール、ナイジェリアなどアジアからアフリカを巡り、
その後ヨーロッパ各国で滞在。アメリカのNYとメキシコの山間部で長期滞在した後、帰国。
変容していく日本の町、特に下町を記録をし始めました。
主宰するミニコミ誌『SANPO・下町通信』も現在43号まで出ています。
今後の活動について、
60歳を過ぎてから体調面を含め、予期せぬことが起こっていますが、
日々を頑張っていきたい。一枚でも多くの写真を撮っていきたい。
永田 收(ながた・おさむ)
1953年 岡山県生まれ、神戸市在住。
写真家。
変わりゆく都市、下町をテーマに撮影を続け、
ミニコミ誌『SANPO・下町通信』を主宰している。
Facebook:OsamuNagata
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永田收さん発行の『SANPO・下町通信』(現在1号~43号+別冊など)は花森書林内でも取り扱いしています。一部250円より。