𠮷岡充 水彩画原画展 開催いたしました
2020年、11/13~11/26までの期間、花森書林展示スペースにて、
「𠮷岡充(よしおか・みつる)水彩画原画展」を展示いただきました。
生まれ育った関西の風景を描き遺すことをライフワークに約14年をかけ描いた「播磨77点」、「神戸90点」、「阪神69点」、合計236点が収められた𠮷岡充さんの2冊目となる画集、『𠮷岡充 水彩画集 ~播磨と神戸と阪神と~』の中から、選りすぐりの原画がずらり。
一枚の絵を描くにあたって、下絵から着色まで全てその現地で行われています。例えばカメラで風景を撮影して家で続きを描くといいったことなどはされていません。そうなると、画材道具一式を持ち運び、同じ天候の同じ時間帯頃に連日通わなければならないということになります。画集の表紙を飾る『御坂サイホン橋』(三木市志染町)の作品は、橋の最寄りの駅まで1時間、橋のふもとまで1時間かけて作画スポットへ通われ、トータル12日間かけて完成されました。
御坂サイホン橋の作品拡大写真。ひとつひとつの石まで精細に描写されています。
描かれる風景には今はもう見ることのできない建築物や、逆に昔から引き継がれてきた場所など記録の意味合いを強く感じます。𠮷岡さん自身、昔の旧街道沿いを歩きながら今尚残っている古い建物を見ることや、入り組んだ路地の中を散策するのが楽しいのだそうです。
『壊れたミゼットのある茅葺民家(神戸市北区)』
展示された作品はどれも繊細なタッチでどこまで拡大しても一つ一つ丁寧に筆を重ねておられることに気が付きます。ひとつの作品が出来上がるのに約2週間かかるので、天候のこともあると月に1,~2作品完成するかどうかというところ。
『𠮷岡充 水彩画集 ~播磨と神戸と阪神と~』に収録された236点を描かれるのにかかった14年という歳月にずっしりとした重みを感じます。
「次の画集が出るのも(この描き方で進めていくと)14年後ということですね」と笑いながら𠮷岡さんは仰っていました。
元町商店街の風月堂、作品の拡大写真。ショーウィンドー内の張り紙や住所板の文字まで読み取ることができます。
創業大正3(1914)年から99年、平成25(2013)年に閉店をした海文堂書店。
展示開催時は2020年12月大晦日で閉店をした東急ハンズ三宮店を描かれていました。基本的には人物は描かれないので、行き交う人を避けながらのスケッチは大変苦労をされたそうです。また最近では東遊園地に移転し、周辺も大きく変化する予定の神戸花時計をテーマにした作品作りに取り組まれています。これらの作品は今年7月に開催されるアートホール神戸(神戸市中央区)での展示会で完成品を観ることができますのでみなさまどうぞお楽しみに。
神戸花時計、鉛筆スケッチ下絵。
吉岡さんは美術大学で日本画を学ばれた後、中学校の美術教師として16年務められました。当時、卓球部の顧問もされ、全国大会出場へと導びかれるのですが、今回の展示期間中にも教え子さんが来てくださったりと、画家以外のお顔も知ることとなりました。
今はコロナ禍で遠出することはままなりませんが、収束し、叶うならば大阪や奈良、京都へも足を延ばし、絵の中にその景色を閉じ込めてみたいですと語ってくださいました。
𠮷岡 充(よしおか・みつる)